TOP > FEATURE > FEATURE > FOCUS03後編:【Sisii デザイナー】、小池孝司さん
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「Sisii」のデザイナー・小池さんのインタビュー後編、アップです。前編を見ていない方、まずはそちらからどうぞ。後編が待ち遠しくて仕方がなかった方も、続けて読んだ方が確実に面白いはずなんで、再度チェックしてください。今回もファッションを楽しむためのヒントが散りばめられています。ときめきメモリアルなアイテムvol.2と併せてどうぞ!

「ファッションにしろ仕事にしろ、自分でジャッジした
ことに対して信じ続けることが大事だと思います」
―ブランドを立ち上げられた27歳の頃というのは、どういったスタイルを楽しまれていたんですか?

「そうですね、[ビームス]で働いていた頃から変わらずクラシックでナードな感じの格好が多かったですね。いわゆるトラッドとは違う、ストリートの流れを汲んだような。ファッショナブルな部分を意識していましたね。1800年代風だったり、アーリー1900年代だったり。その頃に穿いていたのが、このウールのジョッパーズパンツ(前編の"ときめきメモリアルなアイテム"vol.1参照)。イギリス軍の古着なんですが、これに同じくイギリス軍のTシャツ(今回の"ときめきメモリアルなアイテム"vol.2参照)を合わせていました。秋冬は、このTシャツの上にイギリス軍のニットを着る感じです」

―ていうかイギリス軍ばっかりじゃないですか(笑)。相当お好きですね。やっぱり今も昔もヨーロッパの服が気になるってことですね。

「結局はそういうことですよね。幼少の頃に観た映画の影響を受け、ファッションを好きになったきっかけはアメリカモノなんですけど、伝統的なヨーロッパのスタイルやカルチャーにも影響を受けています。僕の世代で映画といえば、『グーニーズ』や『E.T.』、『スタンド・バイ・ミー』など(※1)、割と当時の自分と近い年代の俳優というか子役が出ている作品が多くて。だからアメリカに行ったとき、僕と同い年くらいの人とはいまだにその話で盛り上がる。10代の頃の流行が一緒だったりするので」

※1  『グーニーズ』や『E.T.』、『スタンド・バイ・ミー』など 世界の映画史に燦然と輝く80年代のアメリカンムービー。ストーリーは異なれども、どの作品も少年たちのピュアな心情が丁寧に描かれている。公開から20年以上が経った今も、まったく色褪せない。
―ちなみに今はどんなファッションが好きですか? それと、ほかのブランドや古着を買って普段から着られたりするんですか?

「好きなファッションは基本的に変わらないですね。やっぱり小学生の頃に観た『太陽の帝国』の影響が強くて。マルコビッチだとか、それを取り巻く人たちのスタイリングがベースにありますね。あとSisii以外のブランドも着ますよ。ウチのショップで仕入れているインポートとかですね。古着も変わらず気になりますけど、店を周るとすれば海外がほとんどです。日本にも良い古着屋さんがあると思うんですけど、なかなか回れていないですね」

―出張が多いと、さすがに時間をかけてたくさん回れないないですよね。それにしてもインタビュー開始から1時間ほど経っていますが、お話を聞いていると小学生の頃から今にいたるまで、本当にずっと服が好きなんだなぁって思います。ファッションに対して、すごくピュアといいますか。

「そうですね。でもファッションと同じくらいインテリアやアートも大好きなんですよ。ショールームに置いてあるピーケ・バーグマンス(※2)だとか、フィリップ・ロルカ・ディコルシアだとか(※3)。特別な括りや繋がりがあったりするわけではないですけど、やっぱりファッショナブルな作品が気になります。インテリアやアート、写真は日本よりも海外、特にNY、オランダ、ベルリンで購入する場合が多いですね。今の時代、パソコンで容易に情報を得ることができますが、手で稼いだ情報ではなく、自分の足で稼いだ情報を頼りにしています。ネットサーフィンにはまったく興味がなくて、あくまで店舗サーフィン。海外の本を見て情報を仕入れることもありますけど、最終的には実際にお店に行って実物を見る」


ライアン・マッキンリーやフィリップ・ロルカ・ディコルシアの写真集。画一的なセレクトではなく、店ごとの特色がはっきりしているという理由で、本はほとんど海外で購入しているそう。
※2  ピーケ・バーグマンス
オランダ出身のクリエイター。オランダとイギリスでグラフィックとインダストリアルデザインなどを学び、現在はアムステルダムで活動する。
※3  フィリップ・ロルカ・ディコルシア
ドキュメンタリーかつフィクションというスタイルで、写真界に多大な影響を与えるハートフォード生まれのフォトグラファー。

―今って本よりもネットの方がスピーディに、なおかつ欲しい情報だけを仕入れられますけど、そこには興味がないと。基本的には日本よりも海外のアーティストが気になるんですか?


※4  永山祐子さん
2002年に永山祐子建築設計を設立した、国内外から注目を集める若手建築家。主な作品に、[afloat-f](2002年)、[ルイ・ヴィトン京都大丸店](2004年)、[丘のある家](2006年)などがある。昨年、[Sisii KOBE]の隣に新設した、Sisii OFFICE,PRESS ROOMのインテリアデザインを担当した。

「いえ、そういうわけでもないですよ。日本でももっと面白いアーティストがいればいいなと常に思っています。たとえばSisiiのショールームを設計してくれた建築家の永山祐子さん(※4)は、実際に依頼する前から注目していましたしね。あとネットで情報を得ることは、決して悪いことではなくて、人と違うことに注目して、人と違う情報を探し出してほしいという意味。ファッションにしても、周りがいいって言っているから、じゃあ自分もっていって流されるのは自信のなさの表れなのかなと。ファッションも仕事も、何でもそうですけど、やっぱり自分でジャッジしたことに対して信じ続けることが大事だと思います。僕自身もこれまでやってきたことは間違っていなかったと思っていますし、推進する勇気と諦めない気力ですね。寺本さん(※前編の注釈参照)から教えていただいたのですが、『所産であるもの以外はすべて剽窃である』とサルバドール・ダリが言ったそうで。あることの結果として生み出されたもの以外はすべてコピーにしか過ぎないと。確かにそうだなと思う反面、それはそれで悪いことではないと思っていますし、例えばウチのレザージャケットなんかは染色前の商品を作り置きしておき、お客様が必要なときに必要なサイズと型を短期に提供できるようにした結果、生まれた商品なのです。なので、所産のものといえますが、デザインはミリタリーやライダースのデザインをモチーフにしています。これはある意味コピーです。立ち上げ当初はお金もなく、各型各色の在庫を持つことができず、しかし、ただの単純な後染めだったら色落ちがひどいですし、粗悪なものになってしまいます。これだとお客様に納得してもらえない。だから当然、技術的な部分を追求して染料を何十回、何百回って試し、染色工程、革のなめし工程を幾度となく繰り返し、それを信じて今でもやり続けているわけです」

―そのダリの言葉をどう受け取るかですよね。そもそもファッションでいう所産なんて、非常に限られていますもんね。アメカジなり何なり、もとからあるものを、それぞれの持ち味を生かしながらいかにアレンジするかが、小池さんたち作り手の方々の見せ所だと思っています。単刀直入ですが、小池さんにとってファッションとは何だとお考えですか?

「やっぱり生きがいですし、これから先もなくてはならないものです」

―トレンドから入るのではなく、映画が入り口だったっていうのがいいですよね。もちろん、僕たちsnazzは、流行を追うことに対して否定的なわけではないですが。

「僕らの世代は多いのかもしれないですね、映画からファッションにっていうパターン。今でも頻繁に映画を観ています。移動が多いので、機内で観ることが多いですね。航空会社によって、良いチョイスをしてくれることもあるんですよ。あとは時間が取れれば、出張先のホテルで観ることもあります。自宅ではもっぱら子どもたちと『スター・ウォーズ』(※5)ですね(笑)。アニメの『クローン・ウォーズ』も大好きで。僕、1973年生まれなんですけど、『スター・ウォーズ』の公開がそれから数年後なので、幼少の頃の記憶とリンクしていて。親からC-3POのフィギュアを買ってもらったりしましたね。当然のことながら、あの映画は本当に良くできています。そのほか、デヴィッド・リンチやジム・ジャームッシュ、アンドレイ・タルコフスキー、黒澤明が好きですね。黒澤明に憧れている、影響を受けている海外の映画監督やプロデューサーの良さったら、それはもう。当然『七人の侍』も好きですけど、『まあだだよ』とか『どですかでん』のような作品も大好きで。かといって今の邦画は観ないんですよね。周りの人からは観た方がいいよって言われるんですけどね。とにかく映画は素晴らしいと改めて思います。限られた状況の中でしかファッションを楽しめていない人は、映画から新しい何かを感じ取れるはずですから」


若手のフィギュアアーティストの作品。NY出張の際、ショップではなくアーティスト本人から直接購入。
※5  『スター・ウォーズ』
ジョージ・ルーカスの代表作にしてSF映画の金字塔。ダース・ベイダーやヨーダといった主要な登場人物のみならず、C-3POやR2-D2などの脇役も相当キャラ立ちしている。

―なんだか映画伝道師のようなコメントですが(笑)、映画にしろ音楽にしろ、ファッションと繋がっていますもんね。もしかしたら、いろんな映画を無作為に観まくることが、自分らしいファッションを見つけられる近道なのかもしれませんよね。今回はご多忙なところお時間を割いていただき、ありがとうございました。今後もsnazzをよろしくお願いします!

小池さんの、ときめきメモリアルなアイテムvol.2

NAVY BLAZER/USED

NAVY BLAZER/USED
19歳でロンドンに行ったとき、現地の古着屋で購入したネイビーブレザー。「アメリカモノのボックスタイプより英国製は立体感がある。リーバイスのデニムに、靴はイギリス軍の白のオックスフォードを合わせてフレンチアイビーっぽいスタイルを実践していました」

TRENCH COAT/UK ARMY

TRENCH COAT/UK ARMY
英国の伝統服地であるギャバリーツイルを使ったイギリス軍のコート。同じトレンチでも、しなやかな生地の「マッキントッシュ」とは似て非なる、ガッシリとした頑丈な質感が特徴。その「マッキントッシュ」のゴム引きコートが生産される前の40年代の逸品。

T-SHIRT/UK ARMY

T-SHIRT/UK ARMY
同じく40年代のアイテムで、第二次世界大戦時にイギリス軍用に支給されたもの。よくある丸首ではなくボートネックがポイントで、まるでスウェットのようなかなり肉厚なコットンを使用している。「イギリス軍のTシャツは、この時代が一番カッコいい」と絶賛する。

PROFILE
Takashi Koike

小池孝司さん

【オーグレデュヴァン代表取締役社長
「Sisii」「Impossidle Possibility」デザイナー】

地元・神戸の高校を卒業して入社した[ビームス]がキャリアのスタート。3年ほど販売員を経験した後、[乱痴気]のスタッフとしてバイイングを担当し、その後の2001年に独立。27歳の頃にレザーウエアブランド、「Sisii」をスタート。国内はもちろん今や世界のバイヤーからも注視される、日本を代表するブランドの一つに。ファッション、特にヨーロッパの服カルチャー全般に精通。映画やアートも相当詳しい。
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