TOP > FEATURE > FEATURE > FOCUS03前編:【Sisii デザイナー】、小池孝司さん
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毎日アップのスナップと並ぶsnazzの名物コーナー「FOCUS」。6月度のゲストは関西が日本に、いや世界に誇る「Sisii」のデザイナー、小池孝司さん。ブランドの看板アイテムであるレザージャケットが身近になったキッカケや自身のスタイルの原点、ファッションとの付き合い方etc...、前回、前々回に勝るとも劣らない貴重な話をお伺いしました。ファッション賢人たちの服遍歴を暴くフリースタイル・インタビュー、まずは前編からどうぞ!

「自分の中でレザージャケットというのは日常着。そこの部分を強く打ち出したかった」
―まずは「Sisii」の看板アイテムであるレザージャケットの話からお聞きしたいと思います。2001年にブランドを立ち上げられる前から、レザーは身近な存在だったんですか?

「そうですね。ブランドを始める前から海外出張が非常に多くて、移動のときに重宝するアイテムっていうのがレザージャケットだった。日本から欧米に行ったときに気候が違うので、関西を出るときはTシャツで、レザーは絶対にキャリーケースに入れていましたね。小さく折り畳めるナイロンモノもいいんですけど、自分の雰囲気に合わないとずっと思っていて。アメリカモノのユーズドにニューヨークの若手のデザイナーズ、イタリア、フランス、ロンドンなどのブランドモノと、今までいろんなレザーを着てきました。一番初めに買ったのは、19歳のときにロンドンに行ったときに蚤の市で見つけた古着です。それから20年近くが経ちましたけど、今でも自宅に置いてありますよ。あの当時は、ホントに値段も安くて良い古着がいっぱいありましたね。

―10代の頃からレザージャケットに親しまれてきたわけですね。そもそも、ファッションはいつ頃から興味を持ち始めたのですか?

※1  『太陽の帝国』
イギリスの小説家、J.G.バラードの長編ストーリーを、スピルバーグによって映画化。日本では1988年に公開された。小池さんは、日中戦争時に上海で暮らしていたイギリス人少年、ジェイミーや彼を取り巻く男性のスタイリングに憧れていた。

「今日もDVDを持ってきましたが、『太陽の帝国』(※1)という映画があって、初めて観たのは中学生くらいだったかな。人物のスタイリングや世界観など、すべてに影響を受けました。僕のファッションの原点が、この映画に詰まっています。ストーリーもいいのですが、マルコビッチを取り巻く男性のスタイリングが抜群で。ショートパンツにボロボロのスニーカーを履いて、薄いTシャツの上からシャツを羽織る。シャツの上にジャケットを羽織ったスタイルもあって、僕も当時10代だったのでこの男のコが相当カッコよく感じて。ミリタリーアイテムの合わせ方、ジャケットの着こなし方、それに髪型にも影響を受けました。今までに何回も観直していますね。今は情報量がすごく多いですけど、僕が10代の頃は雑誌の数も限られていたから、映画が情報源でした。あの監督が好き、この俳優がいいとかではないんですよね。振り返っても内容が思い出せなくて、名前すら出てこない。知らず知らずのうちに、スタイリングを見るために映画を楽しんでいたのかなって。そういう映画を観て、中学3年の頃にリーバイスの赤ミミを買いました。ちょうど古着ブームが始まった頃ですかね」

―中学時代から映画をたくさん観て、赤ミミを購入するほど服が好きだったんですね。

「前川さん(※2)から紹介していただいた寺本欣児さん(※3)と出会って、加速したというか、さらにのめり込むようになりました。中学、高校時代に[ノックアウト]に行っては欣児さんばかりを探し、その欣児さんにファッションのことを教えていただいたのが大きかったですね。トレンドやセンスうんぬんではなく、ファッションビジネスの話をお聞きしたり、いろんな方を紹介していただいたり。高校時代はハワイアンシャツにグラミチのショーツ、足元はVANSのオックスフォードが好きでした。僕が15、6歳の頃、スカジャンを着てエンジニアブーツを履いてリーゼントっていう人が多かったんですけど、僕はそれにあまり魅力を感じなくて、'80年代特有のスケーターファッションにハマりました。『ターミネーター』(※4)に出てくる男のコの、黒の迷彩のM-65にスリムパンツを穿いて、足元はコンバース、髪型はセンター分けで2ブロック。そっちの方が好きでしたね。その頃、10年後にはアパレルの世界で独立したいなっていう考えがありました。前川さんや寺本さんの影響もあって、この世界で仕事をしたいという考えが強くなって。それで、高校を出てから進学せず、やっぱり洋服を学ぶのであれば、当時からとてもカッコよくて憧れていた[ビームス]に入社しました」

※2  前川拓史さん
地元・神戸を愛する[乱痴気]の代表。[ノックアウト]に勤務し、'93年に[乱痴気]をオープン。現在は神戸に3店舗、東京に1店舗を展開。ブログ(http://lantiki.exblog.jp/)をチェックすれば、前川さんの人となりが透けるように見える!
※3  寺本欣児さん
数々のインポートブランドを取り扱う、株式会社サーティーファイブサマーズ代表取締役。学生時代の小池さんに、最も影響を与えた人物。
※4  『ターミネーター』
1984年公開のアメリカ映画。この春にカリフォルニア州知事を退任したばかりのシュワちゃんの出世作としてあまりに有名。公開当時、分かりやすすぎるストーリーが小学生をも虜にした。
―小池さんが10代の頃、まだ[ノックアウト]で勤められていた前川さんの顧客だったんですね。ちょうど10代後半から20代前半ですか。その当時はどんなファッションが好きでしたか?

「アントワープ6人衆の影響を受けました。今もまったく色褪せていなくて、まだまだ別格といった感じですよね。当時はファッションも大好きでしたけど、同じくらい海外旅行に夢中でした。17歳のときに家族と一緒に初めてサンフランシスコとニューヨークに行ったんですけど、それ以来、一人でロンドンに行ったり兄弟だけでまたアメリカに行ったり。お金を貯めては海外に行くっていう流れみたいなものがありました。[ビームス]で3年弱勤務した後、ちょうど震災の前に前川さんが独立するということで、僕も独立願望がありましたから、[乱痴気]で働かせてもらいました。5年間、販売と仕入れをさせていただいて、27歳のときに「Sisii」を始めました。スタートの前からレザーをメインにするという構想は当然ありました。その当時、僕の周りでレザージャケットを着ている人というのは、お金にゆとりのある人や販売員、バイカーが多くて一般的には手が届きにくく、牛なら牛、羊なら羊の決まった質感のものしかなかった。そこで、もっとプライスを抑えた、今までにない質感で良いものを作りたいと。バイカーが着るようなゴテッとしたものじゃなくて、手入れが大変そうな高級な革ではなく気軽に着られるような、それこそカーディガン代わりにサラッと着られるようなジャケットを作れないか考えていました。やっぱり自分の中でレザージャケットというのは日常着だったので、そこの部分を強く打ち出したかった」

―レザージャケット、確かにモノ単体として抜群にカッコよくて、着る人一人ひとりのキャラクターみたいなものが経年変化に表れますよね。その分、敷居が高いというか、たとえばワークやアウトドアアウターのように普段のスタイルに取り入れやすいものではないのかなと。着る人を選ぶといいますか...。

「おっしゃる通りですし、実際に僕も昔はそうでした。ゴツくて着ると肩が凝りそう、ボテッとしていてサイズが大きい、カタチがどれも一辺倒など、今でもネガティブなイメージがあるかもしれません。ただ、だからこそ軽やかでいてキレイな質感の革を使った、美しいシルエットのジャケットを作りたかったんです。気負わず着られるような。それにウチのジャケットは、中性洗剤で水洗いできるのも特徴の一つです。汚れが気になったら、洗って陰干ししてもらえる。それはやっぱり普段着として、頻繁に着てほしいからです。機能的な羽織りモノという感覚で考えてもらえればと思いますね」

ふ~。以上が前編です。今回は少年時代から始まり、[ビームス]や[乱痴気]でキャリアを積み重ね、そして「Sisii」の立ち上げまでを時系列で語っていただきました。文中にもあるように、レザージャケットに対してネガティブなイメージを持っている読者も、一度「Sisii」のアイテムを手に取ってみてはいかがでしょうか。レザージャケットの概念が変わるかも、です。さて、後編のアップは6月27日(月)の予定。前編よりも、小池さんのパーソナルな部分に迫れたのではないかと自負しています。乞うご期待!

小池さんの、ときめきメモリアルなアイテムvol.1

B.D.SHIRTS/Luigi Borrelli

B.D.SHIRTS/Luigi Borrelli
熟練職人のハンドメイドによる「ルイジ・ボレッリ」のボタンダウンは、10代後半の頃に購入。アームホールに若干ゆとりのあるサイズバランスが気に入っているそうで、襟の裏が破れるたびに張り替えている。ちなみに、襟のボタンを留めないのが小池さん流の着方。

MESH BLOUSON/VIABO

MESH BLOUSON/VIABO
シャツとほぼ同時期の18歳の頃に[ビームス]で買ったというパリのデザイナーズ。メッシュ仕立てになっており、無地のTシャツやテーパードの効いたパンツを合わせていたそう。「これを主役に、アラン・ドロン的なフレンチシックスタイルを楽しんでいました」

JODHPURS PANTS/UK ARMY

JODHPURS PANTS/UK ARMY
ヨーロッパのミリタリーアイテムは特にイギリス軍が大好きで、ヨーロッパでのバイイングのたびに買い足していたそう。写真のジョッパーズパンツは'40年代のもので、「乱痴気」で働いていた頃に購入。スニーカーよりも、ブーツに合わせることが多かったそう。

PROFILE
Takashi Koike

小池孝司さん

【オーグレデュヴァン代表取締役社長
「Sisii」「Impossible Possibility」デザイナー】

地元・神戸の高校を卒業して入社した[ビームス]がキャリアのスタート。3年ほど販売員を経験した後、[乱痴気]のスタッフとしてバイイングを担当し、その後の2001年に独立。27歳の頃にレザーウエアブランド、「Sisii」をスタート。国内はもちろん今や世界のバイヤーからも注視される、日本を代表するブランドの一つに。ファッション、特にヨーロッパの服カルチャー全般に精通。映画やアートも相当詳しい。
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