TOP > FEATURE > FEATURE > FOCUS04後編:【[乱痴気]代表】、前川拓史さん
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お待たせしました、[乱痴気]前川さんのインタビューの後編をアップします。前回の創業ヒストリーとは打って変わり、今回は今後の展望やセレクトショップの在り方などを多いに語っていただきました。前川さんの私物を紹介する「ときめきメモリアルなアイテムvol.2」を含め最後までじっくりと読めば、今すぐショップに行って買い物したくなるはずです!

やっぱり地元に根付いた店作りをして、
街の顔にならないといけない。

―93年、記念すべき1号店がトアウエストにオープンし、それから歩いてすぐの場所に2号店ができ、3号店が栄町、4号店が北野坂にそれぞれ立て続けにできました。ゼロ年代の最初の方に、雑誌の仕事で一日に4店舗を周る機会があったんですけど、同じ[乱痴気]なのにラインナップもスタッフさんのキャラクターも店ごとに違っていて、凄く面白かったなと。当時の関西ではそういう店ってなかったように思います。

「店の規模を大きくしよう、数を増やそうという意識はそこまでなくて、ブランドが増えていくにつれて、このブランドとこのブランドの並びは違和感があるなとか、そういうのが店舗を分けた理由です。店ごとの仕入れもやっているし、自社商品のMDも自分でしているので、自然とそういう流れになりましたね。そもそも「乱痴気」を始めたときは、いろんな要素をギュッと凝縮していた。それで2、3年が経った頃に初めてヨーロッパに買い付けに行ったときに、アメリカモノとはまた違って面白いなって感じて。オランダやフランスに行って、やっぱり洋服のルーツはヨーロッパにあるなと。そこからミリタリーをどんどん探すようになって、また国内外のブランドも増えていくに従って店ごとのラインナップも分けていくようにしました」

―前川さんご自身のファッションも、年齢を重ねるごとに移り変わられたんですか? [乱痴気]を立ち上げられる前はネルシャツにバンドT、スニーカーとおっしゃっていましたが。あと、その時々のすべての取り扱いブランドを前川さんが決められるんですか?

※1  「N.ハリウッド」の尾花さん
原宿にあるユーズドショップ[ゴーゲッター]のバイヤーを経て、2002年に「N.ハリウッド」をスタート。ブランド設立以前から古着のリメイクを手掛けており、前川さんとは古着バイヤー時代からの仲。

「基本的にはそんなに変っていなくて、ずっとアメカジですね。コテコテのアメリカンな着こなしより、ちょっとハズした感じの格好が好きなんで、その時の気分によっていろんな服をチョイスして楽しんできました。身につけていて気持ちがいいとか、楽チンっていうのが好きで、それは20年くらい変わっていないです。特に最近はいろんな服を着ていますね。気に入ったスニーカーがあれば、ずっとそればっかり履いていて、何か周期があるんですよね。それに天の邪鬼でもあるので、今だと「オールデン」は履かない(笑)。流行り出すと自分はその波に乗らなくなる。だから今気になっているのはプリントTかな。最近、街を歩いていてプリントTよりも無地を着ている人が多いなって。あとブランドに関しては僕が最終的なジャッジをしていて、今もすべての展示会に行くようにしています。東京を拠点に活動しているバイヤーなど、スタッフから『こういうブランドがあって』と、相談されることもありますけどね。扱う、扱わないというジャッジは、言葉にするのが非常に難しい。やっぱり作られているデザイナーの方が情熱を持っておられるかとか、その人のモノ作りに共感できるかということになりますかね。僕が知らないことを知っている方に惹かれる傾向もある。例えば「N.ハリウッド」の尾花さん(※1)は、初めて会ったときからほかのデザイナーとは違うなって感じていました。アメリカで古着を買い付けていた頃、同じアパートで一緒に生活していたことがあったんですけど、古着を集める目線、セレクトのポイントが周りの人たちと全然違っていて。リメイクにしても、この服の袖をこっちに付けてっていうパターンがありますけど、尾花さんの場合は『ここをこう染めると、ここの色だけが残るんです』とか、そういった話を聞いていて非常に面白かった。同じアメリカモノの古着でもリメイクでも、人と違う視点から見ていてカッコいいなぁと。そうそう、一番衝撃的やったのが、僕が高騰する一方のヴィンテージがイヤになってきてブリーチモノなんかの面白い古着を買っていた頃に、尾花さんは40インチのデニムを折り畳んで穿いていて。発想が新しすぎて、凄いことを考える人が出てきたなと、本当に衝撃でしたね」

―ありましたね、めちゃめちゃ太いデニムを折り畳んでジッパーで留めるやつ。「ミスターハリウッド」のオリジナルとして展開されていたような。確かにあれを初めて見たときは衝撃的でした。大阪で「ミスターハリウッド」を扱っていた店でも、ソッコーでに売り切れたみたいです。

「そういった縁もあって、次の秋冬から尾花さんと一緒にウチの自社ブランドをスタートします。"じばさん"(※2)の一環として、「motihada」(※3)という起毛の防寒肌着ブランドに着目してウチが別注したアイテムがあるんですけど、それを尾花さんが気に入ってくれていて、何か一緒にできないかなと考えていて。それで今季より子供服を展開することになったんです。尾花大輔企画の子供服。まだサンプルができあがってきたところなんですけどね」

※2  じばさん
[乱痴気]と同じ兵庫県下の地場産業の品からセレクトする、2009年からスタートした企画。過去には淡路の手延素麺や小野市の播州そろばんなどを展示・販売していた。中には「motihada」のようなコラボ企画も。
※3  「motihada」
兵庫県加古川市の防寒肌着メーカー、ワシオ株式会社が展開する自社ブランド「もちはだ」と、[乱痴気]との共同企画シリーズ。カットソーやネックウォーマー、レギンスなどを展開。
―へ~、子供服ですか。しかも「N.ハリウッド」の尾花さんがディレクションされると。相当面白そうですね。またsnazzでも取り上げさせてください。さっきの取り扱いブランドの話なんですが、今でも全部の展示会に行かれるんですね。

「そうですね。後からバイヤーや店長が撮ってきた写真を見るだけでじゃなく、やっぱり自分の目で見ておかないと。社長自らが展示会に行くのは、ほかでは少なくなってきているのかもしれないけど、僕自身は企画もデザインも、それに職人さんのようなモノ作りもできない。新しいものや面白いものを見つけてくることくらいしかできないわけですよ。「motihada」にしても、「シーサン」っていう奈良で作っている漁師とかが履いていたサンダルにしても、そういうバイヤーでは目の届かないものを見つけてこようとは常に考えています。ケミカルシューズ工業組合の展示会とか、スーパーの従業員はいても服屋の人はまずいない(笑)。気になるものがあれば、とりあえず実際に行ってみて、作っている方に話聞いてっていうのを続けていますね。「motihada」の素材をカジュアルなアイテムに落とし込んで服が好きな人が着られるように作るとか、そういった動きが[乱痴気]の強みというか独自性を打ち出せることに繋がる。もちろん、僕一人でそれを可能にしているわけじゃなくて、僕が出したアイデアをカタチにする企画がいて、できあがったものを上手くPRするプレスがいて、それをお客さんに伝える販売員がいる。頼もしいですよ。そういった意味では、しっかりと役割分担できていますね」

―確かにそうですね。地場産業と一緒に取り組んでいるショップは、おそらく[乱痴気]くらいですし、バイヤーの方も発想しなさそうなネタが多いですよね。

「"じばさん"とは違うんですけど、今度僕が企画した『アラレちゃん』とコラボレートします。「ニューエラ」シリーズ(※4)の新作です。プロ野球ネタの次に何かないかなって考えていたら、帽子といえばアラレちゃんやろって(笑)」

※4  「ニューエラ」シリーズ
B.B.キャップブランドの「ニューエラ」に別注オーダーした、南海ホークスの復刻B.B.キャップ。[なんばパークス]内にある、[乱痴気パークス]のオープン記念として企画。その後、南海ホークス復刻キャップは第4弾まで作られた。

―よく申請が通りましたね。あの鳥山 明も許可したんですね(笑)。南海ホークスは野球繋がりなので分かりますけど、ニューエラとアラレちゃんっていうのが新鮮ですね。

「ニューエラジャパンさんに多少強引にお願いして、スタジャンに使われるようなフェルトの羽根をサイドに付けてね。あとは、まだ公表できないんですが、アラレちゃんに続く次のニューエラシリーズも企画中です」

―それは、また別の機会にってことで(笑)。それにしてセレクトショップの枠にとらわれず、いろんなことをカタチにされていますよね。ここらで今後の展望を聞かせください。

「そうですね。アラレちゃんのニューエラが置いている面もあれば、「N.ハリウッド」を扱っている面もあって、同じ[乱痴気]でもいろんな表情がある。その辺りの引き出しの多さは、僕自身、今後も大いに楽しんでいこうと思っています。あと新たな試みとして、ウチの自社ブランドを全面に打ち出したショップをやりたい。原点回帰じゃないですけど、セレクトショップという業態ができて30年、ウチが創業して20年弱が経ちました。昔はセレクトショップという一つの枠で括られていましたけど、買い周りの良い駅ビルの中にある店もあれば、駅や街中から少し外れたところにある店もある。ウチも駅ビルからオファーをいただいてすごく悩んだ時期があったんですけど、そうじゃないよなって。スタッフと一緒に考えた結果、去年この場所(栄町通の西にある乙仲通)にわざわざ本社を移して、創業時の頃のような街並みであったり、内装や外観であったり、そういうのを見直したいと。焼き直しではなく、また新たに構築していければいいなと。そういったこともキッカケになって、セレクトの部分とは別の提案として『これが乱痴気の商品です』と、自信を持って薦めたいと思っています。ただ、さっきも言ったように僕自身はモノ作りや企画デザインはできないけど、材料になるモノやネタは見つけられる。ネタ集めにインドに行ったり、パリに住んでいるアフリカ出身の知人と話をしたり。たとえば国内であれば、ただ単にOEMで服を作るっていうよりも、もっと工場と深く関わり合いながら作りたいと思っています。昔、アメリカに生地を輸出していた工場が西脇にあって、僕が古着で見たことのある生地をストックされていたんですよ。そういった産地に入り込んで、素材からしっかりと作り込んでいく。「motihada」もそうですし、日本独自の生産背景のあるところとのモノ作りを「乱痴気」の一つの特色として打ち出していきたいと考えています。もちろん東京からもインプット、アウトプットを続けますが、やっぱり地元に根付いた店作りをして、街の顔にならないといけない。神戸の工場さんとか生地屋さんと一緒にモノ作りしていけるような提案を続けて、『乱痴気にしかない服がある』。そんな感じにしたいですね。HPにしてもオシャレでカッコいいとかよりもウチらしいものにしたいと常に考えているし、ブログも僕にしか書けない内容にしたい。さっきのアラレちゃんのキャップも、絶対にウチしか企画しないでしょ? そういうことを改めてしっかりやりたいと思っています」


アラレちゃんのアイコンであるキャップをイメージしたエクスクルーシブ。
本文にもあるように、羽根の部分はフェルトによって立体的に再現。南海ホークス復刻モデルと同じく「ニューエラ」製で、アラレちゃんバージョンとガッチャンバージョン、さらに完全別注のオールブラックも展開。11月中旬に神戸[乱痴気TOAWEST]、大阪[LANTIKI PARKS]、東京[乱痴気CENTRAAAAAL]、ZOZO[乱痴気STADIUM]でリリースされる。巨匠、鳥山 明のコアなファンのみならず、アラレちゃんを知らないティーンもぜひ!!
『Dr.スランプ アラレちゃん』×ニューエラの乱痴気別注59FIFTY CAP各\6,720

―ネットの隆盛もあり、リアルショップの持つ影響力というか、役割のようなものが問われてきていますもんね。


「ツイッターやフェイスブックもしていかないといけないけど、その一方で、最近はやってなかったんですけど、神戸の美容師さんと一緒に街を盛り上げるためにイベントをしようという話もあって。一時期は街を歩いている人、特に男の子が減ったという話をしていましたけど、最近になってライブハウスに人が戻ってきて、夜にスケボーしている人もまた増えてきています。だから、また元気になりつつあるこのタイミングで、ちゃんと企画した面白いイベントをすればもっと街に活気が出るんじゃないかなと。店もそうですけど、そういった本気で遊べる場所も作っていきたいですね」

以上で後編が終了です。気概があるといったら失礼極まりないですが、初めてお会いした頃から変わらず本当にアツい方です。前川さんのような方がファッション業界にいる限り、セレクトショップという業態、ひいては街が衰退することはないだろうなと改めて感じました。秋以降、さらなる動きがあるようですし、これからも[乱痴気]を追い続けたいと思います!

前川さんの、ときめきメモリアルなアイテムvol.2

DENIM JACKET / LEVI'S

DENIM JACKET / LEVI'S
コンディション良し、色落ち具合良し、サイズ良しの三拍子が揃った'50sの2ndは、[ノックアウト]にお客さんとして通っていた頃に購入した思い入れの深い逸品。[ノックアウト]に勤めていたときに買い集めたヴィンテージは、大切にストックしているそう。

DENIM JACKET / J.C.Penney

DENIM JACKET / J.C.Penney
アメリカのストアブランド、「J.C.ペニー」。「リーバイス」のヒットにあやかって生産されたものに、後からブリーチを施している。写真上の2ndのような王道を押さえたうえで、このような古着ならではの面白味のあるアイテムを[乱痴気]創業時に提案していた。

NYLON JACKET / BROWN by 2-tacs

NYLON JACKET / BROWN by 2-tacs
スタイリストで古着再生家の本間良二さんが手掛ける「ブラウン バイ ツータックス」。写真のジャケットは、白のナイロンにリフレクターのドットプリントを配した今春夏のもの。「こういう化繊もあれば、オーガニックなウエアもある。両極端な服作りが面白いですね」

PROFILE
Takuji Maekawa

前川拓史さん

【株式会社ワークトゥギャザーロックトゥギャザー [乱痴気]代表】

生まれも育ちも、飲むも食べるも神戸。地元の高校を出た後、九州の大学に進学。卒業後、園芸関係の企業に就職するも、数ヶ月で退職。高校時代から足しげく通っていたユーズドショップ[ノックアウト]に入り、5年間、買い付けや接客のイロハを学ぶ。93年10月、トアウエストに[乱痴気]をオープン。18年の間に移転や店舗拡大などを経て、現在は神戸に3店舗、大阪と東京に1店舗ずつを展開する。自社ブランドのプロデュース、アニメやプロ野球球団、本拠地である兵庫の地場産業とのコラボレートなど、社長業と同時に現在も多くのプロダクトを仕掛ける。

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